●吉備考古ライブラリィ17 吉備の飛鳥古墳 |
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●著者名:亀山行雄(高梁市教育委員会)
尾上元規(岡山県古代吉備文化財センター)
●A5判、並製本、156頁
●定価:1,680円(本体1,600円+税)
●ISBN978-4-86069-180-6
●発行:2008年1月19日
●内容
前方後円墳の時代が終わった後、
吉備では方墳や円墳の飛鳥古墳の時代が始まります。
国指定史跡の大谷1号墳や定北古墳などの飛鳥古墳を取り上げ、
その分布や列石、石室などの特徴を解説し、
大和政権との関係から吉備の古墳が小さくなっていく背景を探ります。
●目次
第一章 「飛鳥古墳」とは
第一節 前方後円墳の終わり
第二節 飛鳥古墳の年代
第二章 吉備の飛鳥古墳とその特色
第一節 備前・美作地域
第二節 備中地域
第三節 備後地域
第四節 飛鳥古墳の特色
第三章 飛鳥古墳の諸問題
第一節 墳丘の築造規格と基準尺度
第二節 飛鳥古墳の地域色
第三節 古墳の終わり
●著者プロフィル
亀山 行雄(かめやま ゆきお)
1962年、鳥取県倉吉市に生まれる。岡山大学大学院史学研究科中退後、1986年から岡山県教育委員会に勤務。現在は高梁市教育委員会社会教育課文化係長。主な論文に、「7世紀の古墳」(『吉備の考古学的研究』(下)山陽新聞社 1992年)、「古墳時代初頭の土器」(『岡山県埋蔵文化財発掘調査報告』104 岡山県教育委員会 1996年)がある。
尾上 元規(おのうえ もとき)
1969年、岡山県牛窓町(現瀬戸内市)に生まれる。岡山大学大学院史学研究科修了後、1994年から岡山県教育委員会に勤務。現在、岡山県古代吉備文化財センター主任。主な論文に、「古墳時代鉄鏃の地域性―長頸式鉄鏃出現以降の西日本を中心として―」(『考古学研究』第40巻第1号 考古学研究会 1993年)、「壺鐙と瓢形円環轡について」(『環瀬戸内海の考古学−平井勝氏追悼論文集−』古代吉備研究会 2002年)がある。
●あとがき
その名のとおり飛鳥時代の中心地である奈良県飛鳥地方の古墳や遺跡をめぐると、石材をきれいに加工して組み合わせた石室やさまざまな石造物を見ることができる。飛鳥時代につくられたこのような遺構、遺物に出会うと、その美しい造形に感銘を受けるものである。今から二〇年ほど前まで、このような古墳は岡山には縁遠いものだという感覚があった。今回、本書で取り上げたような「飛鳥古墳」が、岡山ではあまり明らかでなかった、あるいは私たちがよく知らなかったためである。吉備の中でも備後地方の南部には、横口式石槨など特徴的な古墳が分布していることを承知していたが、岡山をフィールドとしている私たちにとって、同じ吉備とはいえ異国のようにも思われた。
その後、岡山県内でも飛鳥時代の特徴的な古墳の発掘調査が相次いで行われ、吉備の飛鳥古墳のイメージは大きく変わった。その中で、亀山は大谷一号墳と二子一四号墳、尾上は定北古墳などの発掘調査に携わる機会をいただき、飛鳥古墳に強い関心をもつようになった。
近藤義郎先生には、岡山大学で考古学の基礎から学び、以来指導をいただいており、このたび本書執筆の機会を与えてくださった。そして、構想、構成から文章表現、飛鳥墳墓の評価にいたるまで丁寧な指導をいただいた。このような形で刊行できるのは近藤先生のお陰であり、深く感謝申し上げたい。
本書をまとめるにあたっては、蓄積された吉備の飛鳥古墳の資料をうまく整理し、飛鳥時代の吉備のあり方やイメージが描ければと思った。墳丘、墓室、副葬品、使用尺度など飛鳥古墳を構成する重要な要素をできるだけ網羅し、飛鳥古墳、飛鳥時代を理解しようと考えた。しかし、いざ作業を始めてみると資料収集に手間取り、久しく訪れていない、あるいはまだ行ったことのない古墳を訪ねてみたりもした。訪れたくてもそれができない破壊された古墳もあり、あらためて残念な思いも味わった。そのような基礎作業にかなりの時間を要し、筆者の怠慢もあって時間に追われることになった。せっかくの共同執筆なのだから、もう少し二人で議論する時間が取れればよかったと反省している。とはいえ、吉備の飛鳥古墳の実例とその特徴、問題点についてまとめることができ、ある程度当初の目的を達成できたのではないかと思う。また、本書の執筆を通じて、何より自分たちがたいへんいい勉強をさせていただいたと感謝している。
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