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小一郎ぎつね




●著者 森本マリア
●英文訳 小泉直子 ジム・ロナルド ナンシー・ロス
●立体挿絵 彩瀬ひよ子
●判型 B5判変型 
●仕様 並製本 カバー付き 本文4色
●ページ数 48ページ
●ISBN4-86069-148-2 C0093 Y1200E
●定価 本体1200円+税

●内容
第二次世界大戦も終わりに近づいたころのことです。広島の町のはずれにあるゆきちゃんの家の近くに、八幡様がありました。鳥居に下で手をパンパンとたたくと、「キャンキャン」と返事をするのです。「神社にはキツネが住んでいる」とみんなは恐ろしがっていました。そしてある夜のこと、田んぼのあぜ道を八幡様に向かう不思議な火を、村人が見てしまったのです…。
作者の幼い頃の体験をもとにしたちょっぴり怖くて、面白いお話です。美しい立体挿し絵、全文英訳付き。

●著者紹介
森本マリア
  1934年生まれ。戦争中の実体験をブラックライトを使った紙芝居に描き、学校や公民館などで上演。広島市安佐北区在住。著書に『音が消えた時』『こどもの目−国民学校と生活の記憶』(吉備人出版)『みち』(新風舎)など。

●目次
ゆきちゃん Yuki
稲荷のキツネ Fox into the Inari Shrine
オシッコがしたくなる The Uege to Pee
オレンジ色の火 oange flames
ねとぼける Half-asleep
不思議な話 A Mysterious Story
逆立った髪の毛 Hair Standing on End
うわさ Rumors
小一郎 Koichiro
ふえたキツネ More Foxes
いも団子 Potato Dumplings
ヨトウ虫 Cutworms
いたずら Tricks
消えたキツネ火 No More Fox Fires
化けの皮 Truth Revealed
ほんのり、しあわせ Small Happiness
ピカドン Pikadon
丸子山の稲荷神社 Inari Shrine on Marukoyama Hill
永遠の鳴き声 Eternal Voice
あとがき Afterword

●あとがきから
「小一郎ぎつね」は、私が描いた絵日記、紙芝居を本にしたものです。
第二次世界大戦の終わりごろでした。
灯火管制がしかれて、家の明かりは一点も外へ漏らさないようにして暮らしていました。
甘いものはなく、甘い野菜を作って食べるのがささやかな贅沢でした。
干し柿・さつまいも・たまねぎ・豆類。
戦争のために殺虫剤がなくて、あらゆる虫は手で取っていました。
夜盗虫は夜中に活動します。
早いものは四月に孵化して夜盗蛾になります。
夜中の害虫駆除は、母もわたしも二人の妹にもつらい仕事でした。
幸いにも、川向こうの人たちがキツネ火の踊りを楽しんでいると知ったので、仕事が楽しくなりました。
戦争中はこれと言った娯楽の無い時代です。
まさか小一郎ぎつねが川向こうの人たちを楽しませているなど、夢にも思いませんでした。
でもあの時代の自然は美しく、のどかでした。
山は青く川は清く空気はおいしく
小一郎ぎつねは、こんな時代の話です。
丸子山の墳墓と貝の腕輪は実物を見ることができます。
三入八幡宮は今も、梵鐘の音とともに、キャン、キャンと鳴いてくれます。
これからも、永遠に鳴き続けることでしょう。