「吉備」の歴史と伝統文化
歴史、食、祭、街道……
今、新たに「吉備」の風景を共有する。
待望の神崎宣武「地域学」講座
「高度成長期以降は、何かにつけて急速にして大幅な変化、変遷が生じた。が、まだ半世紀をさかのぼっての追認が可能である。体験の記憶をもつ人も少なくないはずである。そこには、感性のようなものがはたらく。たとえば、私たちの先祖代々がどういう思いで日々の生業(なりわい)に取り組み、どういう思いで自然や神仏を崇めたか、を追認していく。そうしたことからはじめれば、身近な文化史(生活文化史)を学ぶことに意義が生じるであろう。」(「はじめに」より)
目次
はじめに
第1章「古代吉備の風景 ―遺跡・神話・文化地理―」
1 古代吉備の風景を描くには
2 吉備の範囲と歴史
3 鬼ノ城の柱穴から
4 柱降ろしと柱立て
5 巨大な前方後円墳
6 吉備の稲作と製鉄
7 『倭姫命世記』の真実
8 『吉備津宮縁起』 からの傍証
第2章「中世の村落と三斎市 ―吉備高原の道をたどって―」
1 古代から中世へ
2 江戸の村と農間稼ぎ
3 氏子帳と檀家帳
4 「砂」のつく小字
5 備中の銅山
6 開墾に由来する小字
7 吉備高原の農村
8 御飯と糅飯
9 桃栗三年、柿八年
10 峠と山の神信仰
第3章「備中神楽『吉備津』―実演を通して能とも比較―」
1 神楽の起源と芸能化
2 中世の姿を伝える備中神楽
3 神楽「吉備津」
4 両義的な日本人の思考
第4章「近世の街道往来 ―参勤交代・伊勢参宮・芝居興行―」
1 矢掛の宿場遺構
2 参勤交代と街道整備
3 庶民の旅が隆盛の時代
4 創造都市としての江戸
5 江戸の旅はさまざま
6 旅の時期は正月明けから
7 庶民の「講」と伊勢参り
8 冬でも緑豊かな伊勢
9 物見遊山の方便としての伊勢参り
10 世界最古の旅行業の御師
11 伊勢みやげの種々
第5章「年中行事と飲食 ―備中のまつりと節供を中心に―」
1 短縮された正月の行事
2 昔の正月事始め
3 江戸のそば事情
4 歳神様と門松の関係
5 鏡餅を分ける
6 1月7日を節供に
7 節供の料理と酒
8 米を尊んだ日本人
参考文献
あとがき
〈付録〉備中志塾と高梁川流域学校六〇年の時を経て
著者プロフィール
- 神崎 宣武
1944年岡山県生まれ。民俗学者。
現在、旅の文化研究所所長、東京農業大学客員教授、公益財団法人伊勢文化会議所五十鈴塾塾長、一般社団法人高梁川流域学校校長、岡山県文化振興審議会委員などをつとめる。
岡山県宇佐八幡神社(井原市美星町)宮司でもある。主著に、『盛り場の民俗史』、『江戸の旅文化』、『三三九度─日本的契約の民俗誌』、『「まつり」の食文化』、『しきたりの日本文化』、『「おじぎ」の日本文化』、『「うつわ」を食らう―日本人と食事の文化』『吉備高原の神と人―村里の祭礼風土記』『いなか神主奮戦記―「むら」と「祭り」のフォークロア』など。
※上記内容は本書刊行時のものです。